知りません

　

応仁の乱なかばから、江戸時代中頃までの日本は、世界的にみると、近畿以北はスペイン領、以南はポルトガル領であった。

千四百九十四年の、ローマ法王の調停にもとづく、スペインとポルトガルの条約によるとそうなる（別枝達夫著「海事史の舞台」）。当時のニ大強国が、リンゴを二つに割るように地球を二分したわけだ。切り口（境界線）は大西洋上の西経四十六度三十七分。以後スペインがアメリカ方面を、ポルトガルがアフリカやインドを実効支配する。

マゼランが地球一周航海に成功し、地球が丸いことを実証したのは条約締結約三十年後の千五百二十ニ年。地球を二つにリンゴ割りした当時、彼らはまさか地球の裏側で日本列島まで切り分けることになるとは思わなかったろう。日本にしてみれば大きなお世話である。なにを勝手な事を言うとるかとなる。

マゼランは地球一周航海の途上フィリッピン諸島にたどり着き、その島々をフィリッピンと名付けてスペイン領としたが、その名付けは時のスペイン王子フェリペにちなむものだという。

先の条約からするとフィリッピンは経度的にいうと本来ポルトガル領だ。それをスペイン領としたのは、地球の丸さかげんがいまだ判然としなかったためらしい。世は大航海時代。彼らはなんでもかでも先に見つけしだい自国領にしたのである。

やがて、後発国のイギリス・フランス・オランダなどが、割り込んできて新しい時代の幕がむりやり開けられたが、当初この地球二分条約のおかげて、どの方向へ船を進めても、後発国はスペイン・ポルトガルに追い払われた。頃まさにイギリスはエリザベス１世（女王）の治世。彼女はこの乱暴な条約に抵抗するに、キャプテン・ドレイクら海賊のスポンサーになり、彼らにスペイン船やポルトガル船を襲わせた。海賊行為は言うまでもなく犯罪である。略奪や殺りくをほしいままにする海賊行為が人類共通の敵なのは当時も今も同様だ。でもこれが戦争行為となると話は別。エリザベス女王を海賊の親玉などとは誰も言わないのである。“勝てば官軍”これも古今の真理。第２次世界大戦当時の原爆投下は虐殺ではなく、敗軍の将ヒットラーやポル・ポトが一方的に犯罪者とされるゆえんだ。でもすごいですなぁ、やはりポル・ポトはいけません。百 万から三百 万もの国民を虐殺した。むちゃくちゃだ。狂気の指導者を持つ国民ほど不幸なことはありません。

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物価が安くなり世間がゆっくりするのをデフレというそうだが、ついでに月給も安くなるとあっては、ぜんぜんうれしくない。大蔵省が悪い、銀行が悪い、とあちこちに悪者がいて倒産が盛んだ。ほんとうの悪者は誰だとの犯人さがしが各所で始まっているが、悪いやつほどよく眠るというから、今、知らぬが仏を決め込んでいるおっさんが本当は一番悪いに決まっている。いったい誰なのだろう。言っときますけど私はなぁ〜んも知りません。小遣い銭が足らない以外、なぁ〜んも悩みが無いもので、毎日ぐっすり熟睡いたします。